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ファブリー病診断におけるマルベリー小体の検査特性

はじめに

 四肢の痛みを訴える小児。鑑別疾患の一つにファブリー病が挙がった。ファブリー病の診断において、マルベリー小体・マルベリー細胞の検出が有用と報告されている。最近、当院でも検査が可能となった。診断精度を調べてみることにした。

診断精度

 文献1の記載だと、感度94.4%、特異度100%となっている。陽性尤度比は∞で陰性尤度比は0.056となる。ただ、100%というのは現実世界では常識的でない。

The accuracy of urinary MBs/MCs testing exhibited a sensitivity of 0.944, specificity of 1, positive predictive value of 1, and negative predictive value of 0.992.

 疾患あり疾患なし
検査陽性170
検査陰性1121
論文の記載
 疾患あり疾患なし
検査陽性17.50.5
検査陰性1.5121.5
ウォルフ‐ハルデイン補正後

 補正後は、感度92.1%、特異度99.6%、陽性尤度比224.7、陰性尤度比0.08と計算できる。

 文献2の記載だと、感度は63%と読むこともできる。疾患にも重症度や発症の時期によって、検査が有用でない時期もあるだろうから、いろいろな研究を参考にする必要がある。少なくとも、こういう論文もある以上、感度については、あまり過剰に期待しない方が安全だ。

Thirty-two patients (63%) had uMBs, while only 31% showed proteinuria.

 文献3の記載だと感度は74%読むことができる。やはり、否定するには注意が必要なのだと思う。

「ファブリー病患者62例のうちマルベリー小体は46例で陽性であり、16例で陰性(陽性率74%)であった(p=0.130)。」

 仮に感度が70%、特異度が98%だとすると、陽性尤度比は35、陰性尤度比は0.3と計算できる。事前確率が50%の場合、陽性であれば事後確率は97%だが、陰性でも23%までにしか下がらない。当院の検査部の案内には、「マルベリー細胞・マルベリー小体を認めず、Fabry病を疑う場合は、複数回検査を実施することを推奨します。」と書いてある。ま、そういうことなのだと思う。注意したい。

参考文献

  1. Nakamura K, Mukai S, Takezawa Y, Natori Y, Miyazaki A, Ide Y, Takebuchi M, Nanato K, Katoh M, Suzuki H, Sakyu A, Kojima T, Kise E, Hanafusa H, Kosho T, Kuwahara K, Sekijima Y. Clinical utility of urinary mulberry bodies/cells testing in the diagnosis of Fabry disease. Mol Genet Metab Rep. 2023 Jun 7;36:100983. doi: 10.1016/j.ymgmr.2023.100983. PMID: 37323223; PMCID: PMC10267638.
  2. Yonishi H, Namba-Hamano T, Hamano T, Hotta M, Nakamura J, Sakai S, Minami S, Yamamoto T, Takahashi A, Kobayashi W, Maeda I, Hidaka Y, Takabatake Y, Sakai N, Isaka Y. Urinary mulberry bodies as a potential biomarker for early diagnosis and efficacy assessment of enzyme replacement therapy in Fabry nephropathy. Nephrol Dial Transplant. 2021 Dec 31;37(1):53-62. doi: 10.1093/ndt/gfaa298. PMID: 33367839.
  3. 坪井 一哉. ファブリー病おけるマルベリー小体検出に関わる因子について. 厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患政策研究事業) 分担研究報告書. https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/分担研究報告書_5.pdf

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