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Hoffmann反射とTrömner反射の検査特性

はじめに

 脊髄症の患者を診察。ところでHoffmann反射とTrömner反射の精度はどれくらいなのか。調べてみた。

Hoffmann反射とTrömner反射の検査特性

 文献1は頚椎症性脊髄症の患者に対して手動の検査(いわゆる普通の手技)と機器を用いて定量化された検査を比較した研究。ここでは、一般診療で行われる普通の検査の診断精度を扱いたい。この研究によると、Hoffmann反射の感度は89.1%、特異度は100%とされている。Trömner反射は感度93.5%、特異度は100%だ。小規模な研究では仕方がないが、人数が少ないと100%や0%が出てしまう。

 以下のように2×2表を勝手に作り直して、Woolf-Haldane Correctionを行って再計算してみる。そうすると、Hoffmann反射の感度は88.3%、特異度は98.4%と計算できる。この数値を基にすると、陽性尤度比は55.2、陰性尤度比は0.12と計算できる。

 頚椎症性脊髄症あり頚椎症性脊髄症なし
Hoffmann反射陽性41.50.5
Hoffmann反射陰性5.530.5

 同様にTrömner反射についても計算してみる。感度は92.6%、特異度は98.4%となる。陽性尤度比は57.9、陰性尤度比は0.08と計算できる。

 頚椎症性脊髄症あり頚椎症性脊髄症なし
Trömner反射陽性43.50.5
Trömner反射陰性3.530.5

 文献2も頚椎症性脊髄症の患者を対象とした研究。これによると、Hoffmann反射の感度は76%、特異度は93%と報告されている。これを基に計算すると、陽性尤度比は11、陰性尤度比は0.26と計算できる。Trömner反射の感度は94%、特異度は82%と報告されているので、こちらも同様に陽性尤度比12、陰性尤度比0.07と計算できる。

 文献3は前者2本の論文の結果とは大きく異なる。Hoffmann反射の感度を61.9%、特異度33.3%と報告している。これを基に計算すると、陽性尤度比は0.93、陰性尤度比は1.1となる。文献1と2はコントロールとして健常人を対象としているのに対し、こちらの研究では頚髄症を疑う患者がエントリーされている点が異なる。問題点としては、PPVとNPVの結果が良すぎる・・・。この精度で事後確率が大きく変わるとは思えないので、根本的に手法が間違っている気がする(きちんと評価されていない論文なのかもしれない)。結果と考察も分離されていない・・・。やはり質に問題がありそうだ。

 これら以外の過去の研究ではどうか。文献2で紹介されていた過去の研究では、Hoffmann反射の感度は58~89%と記載されている。Trömner反射の感度は93.5%と報告する論文もあるようだ。

 いつものことだが、他の情報を含めて判断する必要がある。

「この所見は、強く脊髄症を疑うことを示唆する論文があります。」

「この所見は、ほとんど脊髄症とは関係がないという論文もあります。」

 どちらも事実。臨床的に役に立たないようで、これはこれでけっこう役に立つ場面がありそうな気もする。

参考文献

  1. Chang CW, Chang KY, Lin SM. Quantification of the Trömner signs: a sensitive marker for cervical spondylotic myelopathy. Eur Spine J. 2011 Jun;20(6):923-7. doi: 10.1007/s00586-010-1681-6. Epub 2011 Jan 9. PMID: 21221662; PMCID: PMC3099157.
  2. Saha, Milton & Uddin, Kazi & Ahmed, Monsur & Alam, Md & Rahman, Asifur & Chowdhury, Dhiman & Hossain, Afzal. (2017). Determination of Sensitivity and Specificity of Hoffmann’s Sign in the Diagnosis of Patients with Compressive Cervical Myelopathy. 7. 20-23.
  3. Chaiyamongkol W, Laohawiriyakamol T, Tangtrakulwanich B, Tanutit P, Bintachitt P, Siribumrungwong K. The Significance of the Trömner Sign in Cervical Spondylotic Myelopathy Patient. Clin Spine Surg. 2017 Nov;30(9):E1315-E1320. doi: 10.1097/BSD.0000000000000412. PMID: 27404855.

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