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加齢黄斑変性に対するルテインの効果

はじめに

 先日、健康診断で視力低下を指摘されて眼科を受診。最終的には、異常なしという結果だったのだが、加齢黄斑変性を予防するためにルテインの摂取を勧められた。その効果を調べてみることにした。

加齢黄斑変性の進行予防に対するルテインの効果

 文献1は加齢黄斑変性の進行予防に対する抗酸化ビタミンやミネラルのサプリメントの効果を検討したメタ解析。この中で、ルテインは後期の加齢黄斑変性への進行をプラセボと比較してほとんど抑制しなかった(RR 0.94、95% CI 0.87~1.01)。有意でなかったが、論文中の数値を用いてRRR、ARR、NNTを計算すると以下の通り。

RRR 1-0.272/0.291=0.065
ARR 0.291-0.272=0.019
NNT 1/0.019=53 (5 years)

 むしろ、このメタ解析では、抗酸化ビタミンおよびミネラルの補給 (ビタミン C、E、ベータカロチン、亜鉛) は後期 AMD への進行を遅らせる可能性があることが示唆されている。

 UpToDate2) では、ルテインについて以下のようにまとめている。まあ、根拠のもとになる論文はほとんど同じなので結論もそう変わらない。

  • システマティックレビューによると、抗酸化ビタミンやミネラルのサプリメントは加齢黄斑変性の発症を予防することはできなかったが、発症を遅らせる可能性があることが示唆された。一方、ルテインやゼアキサンチン単独での効果は限定的であった。

 アマゾンなどでもルテインのサプリが大量に売られている。ただ、研究で投与された量(10㎎/日)よりかなり多い50㎎や100㎎の剤型のサプリもある。大量に服用したら結果がどうなるのかは未知なので慎重に考えておいたほうがいい。

ルテインが高濃度の商品の例(特定の商品を勧めるものではありません)

ホウレンソウの摂取

 そもそも、ルテインは緑黄色野菜に多く含まれる成分だ。文献3はルテイン高含有ホウレンソウを毎日75g(ルテイン10㎎含有)摂取させる研究。この研究結果は、ホウレンソウを接種することの有効性を支持している。

  • 平均の黄斑色素密度・視力・血清ルテイン濃度は、ベースラインに比べ、摂取開始1か月後、2か月後でそれぞれ有意に上昇した。

 個人的には、(嫌いじゃなければ)野菜を普段より多めに摂取する、野菜をおいしく食べる工夫をするというほうが、生活が豊かになるような気がしてしまう。だからと言って、特定の野菜をワイドショーの健康関連のネタにしたり、買い占めるのはばかばかしい。「この野菜、健康にいいんだって」「へ~、怪しいね」くらいの扱い方が一番安心できる。

参考文献

  1. Evans JR, Lawrenson JG. Antioxidant vitamin and mineral supplements for slowing the progression of age-related macular degeneration. Cochrane Database Syst Rev. 2023 Sep 13;9(9):CD000254. doi: 10.1002/14651858.CD000254.pub5. PMID: 37702300; PMCID: PMC10498493.
  2. UpToDate. Age-related macular degeneration. last updated: Feb 21, 2024.

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