はじめに
下肢(大腿後面が中心)の痛みの患者。運動障害なし。後大腿視神経障害を強く疑う。梨状筋症候群(坐骨神経障害)と区別した方がいい。
梨状筋症候群を疑ったときや、梨状筋症候群の治療が奏功していない場合には基本に立ち戻って、同疾患を想起したい。
後大腿皮神経障害のまとめ
- 第4腰神経~第3仙骨神経前肢は仙骨神経叢を形成する。仙骨神経叢の終末枝には、上殿神経、下殿神経、後大腿皮神経、陰部神経、さらに人体で最長の神経である坐骨神経がある。1)
- 大腿後面は仙骨神経叢の終末枝の一つである後大腿皮神経に支配されている。1)
- 座位や椅子から立ち上がる動作で大腿近位後面を痛がる場合が多く、圧痛がはっきりしないこともある。大腿後面の知覚鈍麻があれば後大腿皮神経障害を考える。2)
- 患者が訴える痛みが殿部から大腿後面、下肢に広がる場合、治療の標的は坐骨神経・後大腿皮神経に絞られてくる。3)
- (後大腿皮神経は)純粋な知覚神経で大腿後面と膝窩内側を支配する。3)
- (梨状筋症候群で)障害される神経は、教科書的には坐骨神経とされているが、実際の臨床では後大腿皮神経や下殿神経の症状も呈することが多い。4)
- 梨状筋症候群の病態把握や治療には、坐骨神経のみならず、他の末梢神経障害の合併も考慮した複合的な病態把握が重要と考えられる。4)
専門家から見たら見立てが違うと当然アプローチは異なる。梨状筋症候群(坐骨神経障害)の治療で良くならないときに、同疾患の評価が必要なケースもあると思う。
参考文献
- 森本康裕. 超音波ガイド下神経ブロック (3)下肢の神経ブロックの実際II(坐骨神経ブロック).2013年 33 巻 4 号 606-611
- 皆川洋至. Journal of Spine Research 13(6): 851-859, 2022.
- 皆川洋至. 整形外科サージカルテクニック 7(6): 709-713, 2017.
- 服部潤, 赤羽根 良和, 永田 敏貢, 齊藤 正佳, 栗林 純. 梨状筋症候群における神経症状の割合について. 2012年 28 巻 P-49
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