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前庭性片頭痛vestibular migraine:VM

はじめに

 回転性めまいを繰り返す患者。めまい出現時には拍動性の頭痛、羞明、耳鳴を伴っていたことが判明。めまいに注目すると難治性のめまいとして分類されてしまうかもしれないが、こういう場合には頭痛などのめまい以外の症状に注目するべきかもしれない。

 前庭片頭痛vestibular migraine:VMは国際頭痛分類第3版に診断基準が掲載されている。1)

 この疾患は、以前日本では片頭痛関連めまいmigraine associated vertigo: MAVとして報告されていたものとほぼ同じと考えていいと思う。

VM診断のポイント

VMの診断についてのポイントを各論文から引用する。

  • 前庭症状を発症する前に多くの患者に片頭痛の病歴があるのが特徴である。また片頭痛家族歴や動揺病の割合も高いのが特徴である。2)
  • 本疾患は、拍動性の頭痛と回転性めまい発作の反復であるが、耳閉感や耳鳴などの蝸牛症状を伴うことも少なくないことから、メニエール病との鑑別において、常に念頭に置くべき疾患の1 つである。3)
  • めまいの性状は自発性めまい、頭位性めまい、姿勢の不安定性、動揺視や視覚誘発めまいなどさまざまである。2)
  • 確実例と診断するためには、少なくとも5 回の中等度以上(日常生活に支障はあるが、なんとか可能な程度)の前庭症状があり、国際頭痛学会の診断基準を満たす片頭痛を有することが必要である。3)
  • 頭痛は必ずしもVMのめまい発作に同期している必要はない。2)
  • めまいと頭痛が関連していない場合にVMを診断する際には、頭痛以外の片頭痛兆候である光過敏、音過敏、視覚性前兆との関連に注意する必要がある。2)
  • 前庭性片頭痛では、聴覚・前庭機能とも基本的に正常のことが多いが、軽度の異常を認めることもまれではない。3)
  • VMに関連した難聴は20%程度に認められるが、軽度で両側性であることが多い。そのため軽度で両側対称性の難聴が長期にわたり続く場合にはVMである可能性が高い。反対に高度の片側性の低音障害難聴であればメニエール病の可能性が高い。2)
  • メニエール病では、一側性の聴力障害の有無が鑑別のポイントとなるが、初期のメニエール病やいわゆる前庭型メニエール病で片頭痛を有する症例との鑑別は困難である。初期のメニエール病を疑って、イソソルビドを処方するも効果の認められなかった症例において,片頭痛の治療薬を投与したところ著効することがある。3)
  • BPPV との鑑別点として、再発が多いこと,若年発症であること、眼振の向きが非典型的であること、発作時に頭痛が生じることなどが挙げられる。3)
  • 診断には他疾患の除外が必要ではあるが、必須の検査所見はなく、基本的に問診によってなされる。3)

 めまいはプライマリケア医の診療で、非常に頻度の高い疾患の一つである。特に、繰り返すめまいの患者で非典型的なBPPVやメニエール病が頭に浮かんだら、この疾患も想起できた方がいい。めまい患者に片頭痛の治療というのは、疑わないとなかなか出来ないと思う。自験例でも、有効な治療に結びついた症例を経験している。

参考文献

  1. Appendix. The International Classification of Headache Disorders 3rd edition. https://ichd-3.org/appendix/a1-migraine/a1-6-episodic-syndromes-that-may-be-associated-with-migraine/a1-6-6-vestibular-migraine/
  2. 五島史行. 前庭性片頭痛. JOHNS 38(10): 1359-1363, 2022.
  3. 岩崎真一. 前庭性片頭痛. JOHNS 37(1): 41-44, 2021.

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