ROCKY NOTEが地域医療を面白くします。

細菌性腹膜炎に対するプロカルシトニンの検査特性

はじめに

 肝硬変、腹水、腹痛、発熱などで想起するべき疾患にSpontaneous Bacterial Peritonitis: SBP(特発性細菌性腹膜炎)がある。今回は、SBPに対するプロカルシトニンの検査特性について学生、研修医と検討した。

 ちなみに、確定診断には腹水穿刺が標準的なようだ。文献1は自施設のデータを提示してわかりやすくSBPの診断・治療について解説されている。

  • SBP の診断は腹水中の好中球数を調べることが第一で、「腹水中好中球数250/μl以上」という診断基準が世界的に共通しています。1)
  • 250/μl以上という診断基準は絶対的なものではなく、実際には急速な腹水の増量、腎機能悪化、腹痛、発熱、炎症反応など、SBP を疑う症状があって好中球数を調べているので、100/μl 前後以上の好中球数だとSBPと判断して治療を開始することが多いです。1)

 地域の事情も様々なので、プロカルシトニンやCRPを有効に活用したい(過信してはならないので、解釈や対応には注意が必要だ)。確定診断を遅らせることがあっては本末転倒であることを銘記しておきたい。

検査特性

 メタ解析 2)によると、細菌性腹膜炎に対するプロカルシトニンの診断精度は、感度83%、特異度92%、陽性尤度比11.06、陰性尤度比0.18と記載されている。個々の論文で最も多いカットオフは0.5ng/ml。

 仮に、事前確率が50%とすると、陽性の場合の事後確率は92%、陰性の場合の事後確率は15%と計算できる。

 SBPに関する診断(PCTのカットオフは0.5ng/ml)でも、感度87%、特異度97%とされている。

 CRPの感度が76%、特異度が81%であることと比較しても、より優れた検査であることが分かる。

Eighteen studies involving 1827 patients were included in the present meta-analysis. The pooled sensitivity and specificity of serum PCT for the diagnosis bacterial peritonitis were 0.83 (95% CI: 0.76-0.89) and 0.92 (95% CI: 0.87-0.96), respectively. The positive likelihood ratio was 11.06 (95% CI: 6.31-19.38), negative likelihood ratio was 0.18 (95% CI: 0.12-0.27)

 比較的最近発表されたSPBに対するプロカルシトニンの診断精度を検討した文献 3)もチェックしてみる。

 こちらの論文では、非代償性慢性肝疾患患者のSBP診断における診断精度は、感度88.9%、特異度90.2%(カットオフ値は0.67ng/ml)と示されている。

 一方、CRPの診断精度は、感度77.8%、特異度85.4%(カットオフ値は57.4 mg/L:こちらは5.74 mg/dlのこと)とされている。

The ROC analysis results yielded that the optimum cut off value for PCT was 0.67ng/ml and sensitivity, specificity, positive predictive value, negative predictive value, accuracy, AUC were 88.9%, 90.2%, 66.6%, 97.3, 90%, 0.947 respectively. On the contrary the optimum cut off value for CRP was 57.4mg/L and sensitivity, specificity, positive predictive value, negative predictive value, accuracy, AUC were 77.8%, 85.4%, 53.8%, 94.5%, 84%, 0.859 respectively.

参考文献

  1. 肝臓内科レター. 飯塚病院肝臓内科. https://aih-net.com/liver/medical/letter/50.pdf
  2. Yang SK, Xiao L, Zhang H, Xu XX, Song PA, Liu FY, Sun L. Significance of serum procalcitonin as biomarker for detection of bacterial peritonitis: a systematic review and meta-analysis. BMC Infect Dis. 2014 Aug 22;14:452. doi:10.1186/1471-2334-14-452.
  3. Datta IK, Bhuiyan TM. Significance of Serum Procalcitonin and C-Reactive Protein in the Diagnosis and Prediction of Spontaneous Bacterial Peritonitis in Decompensated Chronic Liver Disease. Mymensingh Med J. 2023 Oct;32(4):1163-1168.

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました